【番外編】幻の喫茶店「カフェギャラリー 宵待草」、一ヶ月の夢

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「カフェギャラリー 宵待草」の歴史は、オーナー吉田キミコさんの人生とは切っても切れないものであります。
キミコさんのOfficial Websiteによれば、前身のアンティークショップ「マリーズチェアー」のオープンが、1981年(昭和56年)。
洋画家 小澤清人氏と共に、サロン・ド・キキを設立したのが1991年(平成3年) 。
30年続けたお店を、キミコさんは2010年、手放します。
お店はそのまま残りましたが、別の人のものとなり、宵待草を愛した人々も、足を踏み入れることは無くなってしまいました。
それから10年。
オーナーが変わった宵待草が、とうとう閉店することになり、その前に一ヶ月間「記憶へのオマージュ、それから」という展示企画が行われることになりました。
かつて宵待草に集った人々が、続々と訪れました。
私も、かつて何度となく友人たちと共に、お茶を頂きながら語らった場所を懐かしみに、このお店で最初に出会った友人と共に訪れました。


雨模様の祝日。


まるで奇跡のようですが、キミコさんとスタッフのかわい金魚さんの他、お客は私たちだけでした。

楚々とした白い花たちが、窓の前に飾られていました。

この日は、スタッフの金田アツ子さんが不在で、ケーキがなかったのが残念でした。
ハーブティ(500円)は2種類。


先に来ていた友人が、マロウブルー(オーガニックはちみつ、レモン付き)を頼んでいたので、私はレモンバーベナミント(生チョコ、オレンジチョコ付き)を頼みました。


「マリーズチェアー」時代、まだハーブが世に知られていなかった頃から、キミコさんはモーリス・メッセゲのハーブをフランスから取り寄せて、淹れていたのだそうです。


ガラスのポットに淹れられたハーブティは、懐かしい味がしました。

取材のお願いをしたところ、金魚さんが「キミコさんのお話聞く?」と仰って下さったのです。
お客様が沢山いらしたら、到底望めなかったことですし、金魚さんのお口添えがなかったら、自分からはとても言い出せなかったでしょう。
本当に、得難いお話を伺わせて頂きました。

この建物は、身体が弱く、森に住むことを夢見ていたキミコさんの為に、お母様が買って下さったのだとか。
大正ロマンの雰囲気は、お母様と小澤清人さんとの好みが強かったそうで、そのお母様が亡くなったのを機に、お店を手放す決心をしたのだそうです。
キミコさんご自身の好みは、2006年に井の頭公園のはずれに開いた「カフェ・ドゥ・リェーヴル うさぎ館」に結実されているみたい。
ガレットが人気のお店、うさぎ館へは、私も2回ほど訪れたことがあります。
キミコさんはその屋根裏をアトリエにして住んでいたのですが、ご近所から変わった人だと思われて迫害されたなどというお話もして下さいました。

かつて宵待草の2階で開催していたサロン・ド・キキは、「皆が自分のやりたいことを見つける場所」だったのだそう。
何とも説明のしがたい不思議な場所だったようですが、ビラを見て、次から次へと人が集まってきたそうです。
そこから巣立ったのはアーティストのみならず、大学教授や花屋さん、デザイナーなど、多種多様な人々。
彼らは世界中へと飛び散っていき、それぞれの場所で活躍しているそうです。
今回の展示には、はるばるドイツから来て下さった方もいらしたそう。
展示に合わせて発売された小冊子「記憶へのオマージュ」には、そんな宵待草ゆかりの人々からの言葉が寄せられ、私も一冊購入させて頂きました。

壁にはキミコさんの絵が並びます。様々な画材を使用して描かれています。

キミコさんは「私は色々なものに手を出すけれど、どれも未完成のまま終わってしまうのよ」と悪戯っぽく微笑みます。
古くなったものや縁があって手に入ったものなどを寄せ集めて、作品を作ったり、お洋服を作ったり、私がやりたいと思いながらも忙しさに紛れてなかなか出来ずにいるようなことを、実践していらっしゃる方でした。
思えば、私が生き方と作品共々に惹かれるアーティストの方々は皆、自らの作り出す美に埋もれて生きているように思います。
私がそんな生活をできるのは、一体いつになることでしょう・・・。

宵待草はこれから、また別の方の手で生まれ変わるようです。
束の間の夢を蘇らせてくれた、すべての奇跡に感謝したいと思います。

アンティークの雑貨と共に、古いドレッサーも売られています。

※カフェギャラリー 宵待草
住所:東京都三鷹市井の頭3-31-16
吉田キミコOfficial Website URL:https://www.kimicoyoshida.com/

カフェギャラリー 宵待草

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