上野の街と人を半世紀以上見守ってきた純喫茶「桂」
初めまして。
今月よりレトロ喫茶東京のライターとして就任した瑠璃です。
就任後、初めての投稿は私にとって思い入れのある喫茶店「桂」にしようと思います。
上野の老舗喫茶といえば多くの人が「桂」を思い浮かべるほどに有名な喫茶店です。
この日は私が上京後初めて訪れた台東区役所西横店にお邪魔しました。
上野駅を出て国道4号線昭和通りからほんの少し入った小さな路地にあります。
入店時は趣味の同好会と見られる団体のお客様が10名程と、ビジネスマン風の方が数名で、たまたま1席空いていたので運よく座れることができました。
店内にはテーブル席が8席、大テーブル、カウンターとある中で、なぜか何度訪れても案内される同じ席があります。
この席の壁側には高倉健さんの写真や本が飾られてあります。
数年前に私は地方から上京してきたのですが、都内の喫茶店の数に驚いたものです。
上野公園散策後に足を休めたく、しかしどこに入って良いかわからず、入りやすそうな雰囲気があるこのお店を選んだのですが、
その時に同じ福岡の筑豊地域の生まれの高倉健さんの写真を見てほっとたものです。
さて、私は名物の手作りケーキセット(770円)を注文しました。
飲み物は30種類ほどある中から選べるのですが、この日は夕刻になっているというのに既に初夏を思わせる暑さだったためにアイスティー(オレンジとジンジャーのフレーバーティー)を頼みました。
(コーヒー以外の他の飲み物を頼む場合は、珈琲との差額を払います。この場合はセットで870円)
レアチーズケーキのラズベリーソースとフレーバーティーの相性は抜群です。
隣の席の女性がサンドイッチを頼むと、厨房から卵を焼く音が聞こえます。これがまた、店内に響くジャズの音色との相性が良いのです。
「相性が良い」というの、は必然的なものと偶然的なものがあり、ケーキと飲み物は前者であり(自分の頭の中で良いと思われる組み合わせを選択するから)、ジャズと調理の音は後者ではなかろうかと感じました。
どうも、自分で作るスクランブルエッグを焼く音と朝のニュースの音は、優雅な気分とかけ離れてしまう(まあそれはそれで平日の喧騒感のスタートを思わせるようで良いのだろうか、私はまるでパブロフの犬だ)、それにしても調理にあうのはスタンダードジャズなのではないか、この「偶然」をもって感じました。
17時も過ぎると、ほとんどのお客様も帰り、店内は一旦静かになりました。
今度は女性客が1人、2人。
読書をする人、書き物をする人、煙草を燻らせながら時計を眺めている人は誰かと待ち合わせなのでしょうか。
このタイミングで、何故、東京のこのお店に高倉健さんの写真や本が多くあるのか気になり、マスターに伺ってみました。
すると、昔、この近くに高倉健さんの事務所があり、専属のカメラマンがよく訪れていたんだ、と教えて下さいました。「きみももう少し早く来れば健さんに会えたかもしれなかったね。」とも。
ふと手に取った高倉健さんのエッセイに「辛抱せんね」という言葉を見つけました。福岡の言葉で「辛抱しなさい」、これは幼少期、身体が弱かった高倉健さんに対して母親がかけた言葉で、筑豊の炭鉱地域で育った人はこの言葉を今でも親から言われているのではなかろうかと、ふと私も故郷に思いをはせました。
決して厳しさだけではない、「辛抱せんね」という言葉の愛情的な側面をこのお店のぬくもりに感じました。
上野は寝台特急や新幹線の始発駅であり、私がそうだったように「東京での出発地点」と位置付ける街ではないでしょうか。
その街で半世紀も街とともに歴史を紡ぐ「桂」
喫茶店「桂」は3店舗、ご家族で経営されています。
1号店は1967年に開業の「昭和通り角店」
手作りケーキと焼き菓子が揃う「カフェ Katsura」
そして今回訪れた上野駅より一番近い「台東区役所西横店」
次回は1号店に訪れてみようと思います。
※珈琲店 桂(台東区役所西横店)
住所:東京都台東区上野4-3-10
電話番号:03-3844-4524
営業時間:[平日]7:30~19:00、[土]8:30~18:00、無休